不思議な本(1)

 

 この聖書という本は合計六十六巻から成っていて、旧約と新約の二つに分かれております。それは三十数名の人たちによって書かれ、第一巻から最後の六十六巻までには一千六百年以上の年月がかかっております。またそれを書いた人たちの住んでいた所も異なっています。ある人はバビロンで書き、ある人はイタリアで、ある人は小アジアの向こう側で、またある人は地中海のこちら側で書きました。書いた人たちの身分も大いに異なっています。在る人は律法学者でした。ある人は漁師、ある人は王子、羊飼いもいました。この聖書は、各種の異なった人が異なった言語を用いて、異なった環境の中で、このように長い時間の中で書き出したものを一緒に集めたものです。とても不思議なことですが、それが一冊の完全な本となっているのです。

 

 編集の仕事を少しでもしたことのある人なら知っているように、異なる作者の作品を編集して一冊の本にしようとすれば、必ず作者の才能や見方が同じ程度でなければなりません。また、たとい彼らの才能や見方が同じ程度であったとしても、たった五、六名の人の作品を一緒にするだけで、互いに衝突したり矛盾したりするものです。聖書というこの本は、その内容はとても複雑です。歴史もあれば詩歌もあり、律法や預言もあれば伝記もあります。多くの人によって書かれ、書いた人の才能や身分も異なっており、時間も場所もとても離れていますが、不思議なことにこれらを一緒にしたとき、上から下までみな一貫していて、少しも衝突や矛盾がなく、完全につじつまがあっているのです。

 

 この聖書を詳細に読んでいくなら、その背後に神の御手が支配していることを認めざるを得ません。三十数名の背景や思想の異なる人が、しかも異なる所で異なった時間に六十六巻の異なった書を書きましたが、今それを一緒に集めてみると完全に一貫していて、まるで一人の人が書いたかのようです。創世記はイエス・キリストが生まれた時より、一千五百年以上も前に書かれました。啓示録はキリストが生まれた時より九十五年後に書かれました。これら二つの書の間には、一千六百年以上の隔たりがありますが、そこには何の矛盾もありません。創世記はすべて始まりを語っており啓示録は世界の終末を語っています。創世記にある始まりを啓示録が完成しているのです。これらの不思議な点は人の解釈を全く必要としないところです。どの一句も神が人を通して書かれたものです。神は背後にあり、その背後で指示者となっておられます。